2022/01/10 09:58
新聞で、松岡修造さんのエッセイを読みました。
記事は、彼が17歳の時に経験したアジア・ジュニア大会での出来事について。テニス選手は世界中を転戦して回りますが、1985年当時、まだ無名の松岡選手は自ら行く先々の手配をし、一人で世界と向き合っていました。
大会で訪れたのは、世界の最貧国といわれていたバングラデシュ。エッセイでは、町で目にした過酷な光景に驚愕し、気づきを得、彼自身がどう行動したかが綴られています。
松岡選手はインフラの整わない国で食事と体調管理を見事にやってのけ、かつツアー期間の練習後は、ボールガール&ボーイと交流して仲良くなります。喜んだ彼らは松岡選手の応援団と化し、試合中のコートはホーム状態に。優勝した瞬間は、子どもたちみんなが祝福してくれたそうです。
大会終了後、松岡さんは参加選手が使ったテニスシューズを集めて子どもたちにプレゼントします。私はこの行動に垣間見える、17歳の彼の美質に感動しました。
なんと無垢で聡明な行為でしょう。
30度を超える炎天下、裸足で、しかも動きが悪いとムチで打たれる(!)ボールガール&ボーイ。1日中働いて手にするご褒美が丸焦げのパン1枚という子どもたちに、同じジュニア世代の松岡さんは「自分にできることは何か」を考える力を持っていたのですね。
お金でも同情心でもなく、テニスを通じた共感のプレゼントに込められた友情は、子どもたちの胸に深く刻まれたと想像します。
ところで私もよく旅をします。
具体的な目的を1つ2つ持って出かけますが、基本的には町をぶらぶらして、人々の暮らしぶりを感じる時間が好きです。
この10年くらいは、いろんな町でコーヒーを〝意識して〟飲むことが、目的に加わりました。バングラデシュには行ったことはありませんが、アジアの旅でふと思い出したのが、シンガポールのフードコートで出合ったコーヒー屋台。
長蛇の列で地元の人に愛されるその店は、なんと〝布〟ドリップだったのです!
三角帽のような長い布はかなりくたびれていて、ネルかどうかは判別不能でしたが、確かにあれは10杯立てほどのドリッパー。布で濾しているのか、布ごとクタクタに煮込んでいるのか・・・布は焦げ茶色に染まって、こなれた感満載。
店主のおじさんの手さばきも鮮やかで、次々と注文をこなしていきます。コーヒーの味はもちろんとってもまろやかで、大満足でした。
やはり、コーヒーはネルドリップが一番!
ネルの魅力を未体験の方は、ぜひ、お試しあれ。(さ)