ピッチャー(白磁)
¥12,000
塩窯で焼いた白磁です。白い肌に淡い緑が映り込んだ窯変が、華やかでやさしい景色を醸しています。背が低いぽってりとしたピッチャーで形状も安定しているので、水やコーヒー・紅茶のサーバーに、ソースやドレッシング入れに、花器にと、幅広く使えます。
●Pitcher (the white porcelain)
This pitcher of the white porcelain was fired up in the salt pan. It gives ornate and gentle look by pale green in one’s skin. Because this one that’s not-overly-height and plump shape is stable, to be used only pitcher but also for server of water, coffee or tea, sauce or dressing container, flower vase etc.
●サイズ:幅約105㎜×高さ約78㎜、内径約95㎜
九州×コロラド生まれの食器は、
線の歪みも心地いい、くつろぎ系
アメリカ合衆国中央部に位置するコロラド州は、ロッキー山脈に代表される雄大な自然が広がる土地です。福岡県出身のカズ(Kazu Oba)さんは、州都デンバーとボウルダーの間に位置するラファイエットという小さな町に、工房を構えて15年が過ぎました。
幼い頃から冒険好きだったカズさんがアメリカに渡ったのは 17 歳のとき。コロラドの高校を卒業後、いったんはコロラド大学で国際関係学を専攻しますが、転科して彫刻を学びました。そこで出会ったのが、言語学者であり彫刻家のジェリー・ウィングレン氏です。以降カズさんは、彼を師と仰ぎ、アートの世界に足を踏み入れます。
生活費を賄うためにレストランで働くうちに、料理にも興味を持つようになったカズさん。その視線は、やがて食器にも向けられるようになりました。陶芸を学ぼうと思い立ち、師を探すうちに、デンバーのアートミュージアムで個展を開催していた唐津焼の中里隆氏を知り、32歳で弟子入りします。コロラドから佐賀県唐津市への移住です。中里氏が営む『隆太窯』での修行は1年半に及びましたが、タイムアウト。納得する成果を得られないまま、カズさんはコロラドに戻りました。
ですが、カズさんは陶芸をあきらめません。幸いコロラドは日本に比べて粘土も焼成費も安くあがる上に、アートセンターでボランティアをすれば、窯は無料で使い放題。その環境をフルに利用し、カズさんは彫刻と陶芸の二足のわらじを履いたのです。そして中里氏が外国の窯に出向く際には、通訳兼助手として同行して同じ空気を吸い、言葉に耳を澄まし、本質を探り、ひたすら中里氏の背中を追い続けました。
カズさんは現在、自前の塩窯で食器を焼き、アメリカと日本で作品を発表しています。「湿度の低い乾燥したコロラドの風土に、塩窯はよく合うと僕は思います。冷却還元すると、ほわっと塩釉がかかってマットな仕上がりになるんです。色も赤から緑、黄色まで幅広く出せる」と言います。
日本人はよく「器は料理の着物」と言いますが、料理と器の関係性が薄いアメリカで、料理のための器を焼き続けるカズさん。そこには、意図して日米のセンスを融合させるあざとさではなく、日本の食文化を背景にしたシンプルな機能美を感じます。 物によってはビッグなアメリカンサイズですが、いずれの器も線がおおらかで、伸び伸びとして明るい。つまり、きれいだけどカッコつけてないんです。くつろぎの時間に使う器としては、これ以上のものはないかもしれません。(さ)